地蔵院聖教の調査

一九九八年一一月一八日から二一日まで、巨鼇山地蔵院萩原寺(香川県三豊郡大野原町萩原、古義真言宗大覚寺派)に出張し、同寺所蔵の「地蔵院聖教」の調査を行なった。本調査は四国史料調査の一環であり、一九八八年度から継続しており、本年度調査は第一一回である。萩原寺には、数点の平安時代の聖教を始とし、多数の鎌倉時代〜江戸時代の聖教が存在するが、これらの多くは萩原寺中興第一世真恵(宝徳元年〈一四九九〉寂)の時代に蒐集、或いは授受されたものと思われる。従って、その中核となるものは真恵が伝えた六方憲深方を始とする、小野流の報恩院流儀海方・実深方、実賢流覚智方・同山本方、金剛王院流覚智方、石山流人師方、中院流、さらに広沢流の慈尊院流・西院流能禅方・華蔵院流などに関する聖教である。
 本年度は第一一函(了)、第二五函(了)・二六函(未了)・二七函(未了)・二八函(未了)・二九函(未了)・三〇(了)、第四六函(了)の調査目録を作成した。調査成果は、各調査担当者が既存の「地蔵院聖教データベース」に追加入力している。なお、本年度までで調査済の総点数は三五〇〇余点に達するが、時代別の内訳としては、平安時代五点、鎌倉・南北朝時代約三八〇点、室町時代約二三〇〇点となっている。
 なお、前年度に引き続き、中村順昭氏(日本大学文理学部)・丸山裕美子氏(愛知県立大学)・渋谷啓一氏(香川県教育委員会歴史博物館準備室)・三谷芳幸氏(東京大学大学院)に調査に参加していただいた。調査目録の原本は古代史料部門研究室に保管している。貴重な所蔵史料の調査を許可された萩原寺住職秋山行徳師に改めて謝意を表する。
                  (石上英一・厚谷和雄・榎原雅治・山口英男)

『東京大学史料編纂所報』第34号